古代ギリシア建築の精華 その1 Ancient Greek architecture
古代ギリシア建築の精華を5回にわたってブログしたいと思います。
アテナ・プロナイアの神殿 Temple of Athena Puronia
エレクティオン Erechtheion
近代さらに現代に連なる芸術としての古代ギリシア建築は、紀元前7世紀ごろに始まり、紀元前5世紀から紀元前4世紀ごろに興隆の頂点を迎えました。
しかしその壮大な建築遺産は、ローマ帝国、ビザンティン帝国と時代が進むにつれ存在が忘れ去られました。
そして18世紀後期、ヨーロッパでは新古典主義建築が勃興しました。荘厳さや崇高美を必要とする建築の規範として古代ギリシア建築がリバイバルしました。
さらに20世紀、ナチスドイツのモニュメンタルな建築に、また日本でも明治の文明開化に伴ういわゆる西洋建築にデザインモチーフとして採用されたのです。
このようなある意味で現代でも生きている古代ギリシア建築を、5つのテーマでその特徴を明かにしたいと思います。
そして、それぞれのテーマごとに、その特徴が顕著に表されている建築を、たくさんある中から代表的な遺跡5つほど選びました。
それらの遺跡は建築史的重要性というより、本質をより深く理解できるだろう遺跡を選びました、よって遺跡の優劣はありません。
ところでこのブログでいうところの古代ギリシア建築とは何なのでしょうか。
まずは時間的・歴史的なとらえかたです。
ギリシア建築は、B.C2000ごろのクレタ文明、B.C.1500年ごろのミケーネ文明が始まりとされています。
そして暗黒時代、幾何学時代を経て、B.C.700年ごろからB.C.400年ごろまでのアルカイック、B.C.480年ごろからB.C.320年ごろまでの クラシック 、B.C.320年ごろからB.C.30年ごろまでの ヘレニズムと続きます。
その後は、ローマ帝国、ビザンティン帝国、オスマン帝国それぞれの支配が、1830年の独立まで続きます。
近代、現代に連なる〈 建築の規範としての古代ギリシア建築 〉 の観点からみてみましょう。
クレタ文明、ミケーネ文明の建築は、素晴らしいものがありますが、ここでいう古代ギリシア建築と関連性が少ないので割愛します。
暗黒時代、幾何学時代はそもそも建築の遺跡はほとんどありません。
ローマ帝国の支配下でも古代ギリシア建築は造られましたが、より装飾に重きを置いた建築ですので、例外を除いて割愛します。
以降は古代ギリシア建築とは別物です。
よって創成期のアルカイック、黄金期のクラシック、円熟期のヘレニズムの時代に造られた建築を、このブログで扱う古代ギリシア建築としました。
クレタ文明 クノッソス宮殿 Palace of Knossos
ミケーネ文明 Ancient Mycenae
次に空間的・地域的なとらえかたです
古代ギリシア建築は、トルコ、イタリアなどギリシア本土(ギリシア共和国)以外でも数多く遺されています。
このブログでは、ギリシア本土にある遺跡のみで古代ギリシア建築の本質に迫られると思いますので、他の地域にある遺跡は別の機会に紹介したいと思います。
古代ギリシア建築の精華シリーズ初回は神殿です。
神に捧げられた建築は、聖なる空間としてどこの国でも、どの時代でも、第一級の建築です。
古代ギリシアにおいても、神殿は古代ギリシア建築の特徴を最も顕著に表しています。
神殿が鎮座する聖域は、〈 高い丘の都市 〉を意味するアクロポリスと呼ばれました。
神殿の平面を観てみましょう。
最もティピカルな平面形は、神が鎮座するナオス(内陣)とプロナオス(前室)を長方形の壁で4周を囲み、その外側に列柱をまわすプリプテラル(周柱式)でしょう。
ただし遺跡数は少ないですが、内陣が円形のトロス(円形神殿)もあります。
次に立面を観てみましょう。
平面の短手が正面です、そこに切妻の屋根が架かっています。
正面には、ペディメント(3角形の破風)があります。それをカラム(独立円柱)とエンタブラチュア(水平梁)で支えています。
そして神殿全体がオーダーという美の規範により整えられています。
《 デルフィ Ancient Delphi 》
ギリシア中部に位置し、紀元前6世紀ごろ最盛期を迎えたデルフィは、古代ギリシア世界で最も重要な聖域でした。
神殿では、巫女を通じて神託(神のおつげ)が個人から国家にまで下されました。
アポロン神殿 Temple of Apollon
パルナックス連山を背景にしたアポロン神殿は、宗教的重要度、最高の神殿です。
アテナ・プロナイアの神殿 Temple of Athena Puronia
数多くの神殿を観ましたが、柱などの形が残っているトロス型の神殿はここだけでした。
《 アクロポリス Acropolis Athens 》
アテネのアクロポリスに遺された神殿群は、建築的完成度からみれば、古代ギリシア建築の代表作と言えるでしょう。
アテナ・ニケ神殿 Temple of Athena Nike
アクロポリスに至る、ブーレのゲートをくぐると、アテナ・ニケ神殿(写真右側)が最初に観えてきます。
パルテノン Parthenon
紀元前5世紀に創建されたパルテノンは、完成度からして古代ギリシア建築の最高傑作と言われています。
エレクティオン Erechtheion
6人の女性像を柱に用いた、カリアティデスの柱廊に注目です。
《 バッセ Bassae 》
アポロ・エピクリオス神殿 〈 Temple of Apollo Epicurius 〉 はアテネのパルテノンを創った建築家イクティノスの作品です。現在修復中ですが世界遺産に登録されています。
《 エギナ島 Aegina 》
アテネから日帰りで行けるエギナ島には、アルカイックを代表するアフェア神殿〈Temple of Aphaia 〉がが遺されています。2層の内陣に注目です。
《 スニオン岬 Cape Sounion 》
アテネから南東に70Km離れたスニオン岬の先端に、ポセイドン神殿 〈 Temple of Poseidon 〉が孤高を保っています。
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